読書記録:十角館の殺人 綾辻行人
あの一文で物語のすべてが一変する。これから読む人には全く情報のない状態で読んでほしい。記憶をなくすことがあったとしたらまたこの物語に出会い、あの驚きを体験したい。私の読書体験の中でも衝撃的だった一冊。
推理小説(中でもクローズドサークル)が好きな人の中では有名だと思う新本格派を代表する一作。
綾辻行人さんのデビュー作で、館シリーズの第一作目。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」のオマージュ作品としてあまりにも有名なために、作品を読む前に前情報が多い作品だが、これから手に取るかたはなにも情報を持たずに読んでほしい。
舞台は、船でしか本土と行き来ができない、無人島角島にたつ、十角館。
からくり屋敷を設計すると有名だった中村青司が自ら設計し住んでいた館、そしてその青司自身が当時館にいた妻や使用人とともに殺されたと有名な館。
その館を大学のミステリー研究会の7人が訪れるところから物語ははじまる。
ミステリー好きな学生たちの気楽な遊び半分の旅行だったはずが、翌日の朝、「そして誰もいなくなった」を再現するようなプレートが館になにものかによっておかれたことにより、7人の間に不穏な空気がながれ始める。
本土では、学生たちの友人である2人と、中村青司の弟に、死んだはずの中村青司から、告発状が届く。
やがて、7人の学生たちを襲う連続殺人。
犯人は誰なのか。
すべてはあの一文で明かされる。
初めて読んだのは今から10年前。
はじめて読んだ時の衝撃は忘れられない。
それまで、ライトノベルや恋愛小説を中心に読んでいた私が、推理小説にはまったきっかけをくれた一冊。
結末はわかっていてもいまだに読み返したくなる。
また結末を知らない状態で読みたいと願ってやまない一冊。
読書記録:この女 森絵都
「この女」の生い立ちを小説にする男を目線で描かれる物語。様々な理由により、社会から少し外れて生きている人々も力強く生きている。
釜ヶ崎のドヤ街で日雇い労働者をしていた礼司は、以前世話をした大学生大輔の紹介で、大手ホテルチェーンの二谷の妻「結子」の生い立ちや人生についての小説をかくことになる。
結子に話を聞こうするが、結子は気分屋で毎日毎日いうことが変わっていき、礼司は振り回される。
結子と過ごす中で、礼司は結子の過去をしり、心通わせていく。
久しぶりに、手に取った森絵都さんの小説。
結子の今まで生きて生きた人生が礼司とつながり、現在の釜ヶ崎の抱える問題にもつながっていくところが面白かった。
推理小説とはまた違うけど、先が気になってしまってどんどんページが進んでいった。
ラストはとりあえずハッピーエンドだったのかなと思ったけど、冒頭からのつながりを考えると、違うのかな。
読者の想像におまかせな部分もあったのかな。
途中が面白かっただけに最後がふわっと終わってしまって私的には物足りなかった。よく言えば余韻が残るというのかな。
いままで読んだ森さんの作品とはひと味違った作風でした。
読書記録:消人屋敷の殺人 深木章子
「嵐の山荘」のような隔絶された屋敷で起こる連続殺人。よくある設定だけどやっぱり密室ものには心惹かれる。
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大学生の幸田真由里は、偶然書店で見つけたベストセラー作家、黒崎冬華(深山大輝と西条かほりの共同ペンネーム)の小説が、数年前、小説家を志して絶縁された兄、淳也の書いていた小説とそっくりであることに気が付く。兄が無事にデビューできたのだと嬉しく思った真由里は、兄を訪ねていくが、兄は失踪していた。兄の行方を捜す中、真由里は兄が共同執筆をしていたのではないかと気が付き、その相手新條誠を訪ねるが新條本人も失踪していると新條の兄、篤史に聞かされる。
淳也と誠の行方を捜す中で二人に黒崎冬華から、日影荘(その昔、完全に密室の屋敷内から大量の人が消え、消人屋敷と言われるいわくつき)への招待状が届く。
罠かもしれないと思いつつ、淳也と誠への唯一の手掛かりのために、大嵐の中、日影荘に向かう二人。
そこで出迎えてくれたのは黒崎冬華の担当編集者と、深山大輝とあうが、招待状自体がにせものだと突っぱねられる。帰るよう促されるが大嵐の中、二人はあとからやってきた同じく招待状をもつ編集者の司とともに屋敷にのこることとなった。
大嵐のため土砂崩れがおき、屋敷につながる道路は分断、救助をもとめた電話をした際、数日は無理だを言われる。外と連絡が取れることに安心していたのもつかの間、電話線がなにものかによって切られ、家政婦が跡形もなく消えてしまった。
密室の屋敷に取り残された5人が疑心暗鬼で過ごす中、連続殺人が幕をあける。
以下、ネタバレを含みます。
密室の特性を生かした、緊迫感とはりめぐらされた叙述トリックによって、結末がまるで違う方向へ転がりだす。
苗字表記の登場人物と、男女どちらともとれる描写にまんまとだまされた。
トリックが明かされる場面は、まったく登場人物がつながらず前にもどって読み返したくらい。
屋敷に伝わる消人の秘密と、今回の連続殺人のトリックがつながっていくところも読みごたえがあり面白かった。
映画鑑賞記録:超高速参勤交代、超高速参勤交代リターンズ
ありえない設定だけどテンポよく楽しめる。笑いあり、涙ありの時代物コメディ
貧乏だけど人が良く、領民にも慕われる大名様が、ひょんなことから天下を取ろうとしている悪者老中に目をつけられ、わずか数日で参勤交代をするように命じられる。
金もない、人でも足りない貧乏藩は、知恵を絞り、どうにか参勤交代を成功させようとする。とにかくお金がないのでひたすら江戸まで最低限の人数で走ることに。
途中で大名様は、自身の傷をわかってくれる遊女と出会い、心通わせ、江戸まで連れていく。
無事に参勤交代は終了、悪者老中は失脚した。
大名様は遊女を側室へ迎え、ハッピーエンドかとおもいきや、帰りのお金を計算し忘れたため、走って帰ることになったのだった。
雑に紹介するとこんな感じの映画。
全く歴史的知識がなくてもコメディとして、楽しくみられる。
くすりと笑えるポイントと、人情にほろりとするポイントがほどよくミックスされ、まだもっと見ていたいなと思える魅力的な登場人物にも支えられいい映画だった。
このころの深キョンかわいいな。女だけど思わず守りたくなるかわいさ。
可愛すぎてあまり遊女の悲壮感は感じなかったけど。
原作は読んでいないけど、本編でははぶかれたエピソードもあるようなので、読んでみたい。
映画鑑賞記録:娚の一生
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しっとりとした大人の恋愛
大手のIT会社に勤務するつぐみは、上司との不倫関係と仕事につかれ、祖母の家にやってきた。
田舎の祖母の家で暮らし、入院中の祖母を見舞う生活を続けていたつぐみだが、祖母は病気で亡くなってしまう。
バタバタと葬儀を終えた翌日、離れで見知らぬ一回り以上年上の男性がいることに気が付く。
離れのカギを持ち、以前祖母と関係があったと話す大学教授、海江田とつぐみは同居生活を送ることになる。
飄々とし、つぐみと結婚する周囲に宣言する海江田。最初は、鬱陶しく感じながらも次第に海江田にひかれていくつぐみ。
恋に傷ついた女性が、新しい恋に落ちるまでのストーリー。
ずっと気になっていた映画。
夫が入ったユーネクストで見放題になっていたので、子供たちの進級準備をしながら見た。
映像がきれいで、つぐみの暮らす家や田舎の風景を見ているだけで、気分がまぎれた。
コロナであまり旅行もいけないから、日常とは違う風景を見ているだけでいやされる。
トヨエツはさすがにふけたなと思ったけど、始まってみたら色気だだもれでした。
漫画4巻分を2時間弱にするのには省いた箇所もあったのか、なぜ2人がひかれあったのかいまいちわからないままラストを迎えた感じ。
最後にちょろっとでた不倫相手役の向井理がかっこよすぎて眼福でした。
トヨエツもすてきだけど、私なら向井理にいっちゃうなー。
ストーリーは物足りないけどきゅんきゅんするポイントもあって素敵でした。
看護師歴 10年 思うこと
看護師免許を取得して、4月で10年になります。
看護の仕事が好きかと聞かれて、はっきり好きとは言えないし、今でも毎日やめたいと思う私の看護師歴について書いてみます。
①大学時代
某国立大の保健学科に通っていました。
正直、看護師になるつもりは全くありませんでした(笑)
先輩たちをみても、保健師になったり、看護とは全く違う企業に就職する人が多かったです。
看護師になるのは、付属の大学病院で働いて管理職目指す人くらい。
進級と単位は厳しいので、とりあえずたくさん勉強はしました。
大学3年生の夏、公務員にでもなろうかとしていた私にゼミの教授が、助産師コースを受けてみたらと勧めてくれました。
助産師にも全く興味なかったけれど同じ学費で免許とれるなら得かなー←
くらいの気持ちで履修。
まあ、泊まり込みで分娩介助とかあって甘くみた自分を後悔しました(このときの話は機会があれば)
看護実習の時とは比べ物にならないほど長時間病院にいた私は、そこで働く看護師の姿もたくさんみました。
毎日バタバタ忙しそうだけど、患者さんには笑顔の先輩たちをみて、「看護師もいいかも」と思ったのがきっかけで、卒業と同時に付属の大学病院へ就職しました。
②新人時代
新卒で配属されたのは、院内でも一番忙しいといわれるICU併設の消化器外科でした。
今は新人教育も見直されているんでしょうが、当時は新人は一番早く病棟へいき一番最後に帰るのがあたりまえでした。休日も委員会や勉強会があれば出勤していました。
朝7時には出勤し、夜は22時過ぎ(辛すぎて3か月で8キロ痩せました笑)休日も勉強会、委員会等で出勤し、まともに休める日はありませんでした。
正直辛すぎて記憶があいまいですが、このころ学んだことは今も活きているし、無駄ではなかったと思います。
ただ忙しすぎてプライベートがないこと、同期が1か月でやめてしまい相談相手もいないこと、夜勤デビューしたあと毎回指導してくれた当時の主任が怖すぎたこと(今思えば主任も自分の仕事をこなしながら学生気分の抜けない私の指導をしてくれて大変だったと思います)などいろいろ重なり、当時の彼氏(現旦那)が東京に転勤になることになりプロポーズされたのをきっかけに1年で辞めることを決意します。
まさに結婚に逃げたかんじですね笑
当時の師長にもさんざん言われました。もう看護師なんかやらないと思ったのを覚えています。
③派遣看護師から個人病院へ就職
結婚して1年は挙式の準備や引っ越しもあり、たまにデイサービスや訪問入浴の派遣をしながらのんびり過ごしました。
このままの生活もいいかなと思っていたとき、派遣先で一緒だった看護師に、「若いんだから今のうちに経験つまないとつぶしがきかないよ」と言われ紹介されたのが今の職場でした。(確かに実務経験が1年の私ができる派遣の仕事は本当に限られていました)
公休が多く、院内託児所があるので子育てしながら働けることが魅力で、最初はパートからと就職しました。
大学病院とはちがい、スタッフは子育て中の30代~50代で、みな家庭を持っており、お互いに都合をつけながら働いていました。
ろくに点滴すらさせない私を手取り足取り教えてくれた先輩(今は定年されましたがたまにバイトに来てくださり仲良くしています)、大学病院ではほぼ自立の患者を担当していておむつ交換や更衣もできない私をあきれながらも毎日つれてまわってくれたヘルパーさん、地頭いいんだから必要なことだけでも勉強しなさいと叱ってくれた師長(今も私の上司です)
本当に周りのひとに支えられて、看護師として一人立ちができました。
パートから正規職員になり、リーダーも任され、はじめて仕事が楽しいと思い始めた5年目のときに長女を妊娠しました。
④2回の育休、主任へ昇格
2016年に長女を2019年に次女を出産し、2回育休をもらい復帰しました。
長女の育休復帰時点から打診されていたけれど次の妊娠を考えていたためお断りした主任への昇格を2021年3月に受けました。
管理職となってからは責任も重くまたやめたい病がでていますが、今度は簡単に投げ出せる仕事でもないのでいまのところ頑張っています。
たった1年で大学病院をやめたときは両親にも呆れられ、当時の上司にも「3年我慢できない看護師は1人前になれない」と言われましたが、
今もなんとか看護師やってます。
なんだかんだ患者さんが元気に退院しお見送りができる瞬間が一番たのしみです。
主任になってよかったと一番思うのは、日勤しかしないし、ほぼナースステーションでリーダーか師長補佐をしているので、毎回退院のお見送りができること。
医師のように治療ができるわけではないし、
退院したら忘れられてしまうし
暴言や暴力まがいのことをする患者さんもいるし
女の世界でスタッフの人間関係はめんどくさいし
いろいろあるけどこの瞬間があるから、また看護師を続けていこうと思える。
まあお給料が安定してるのもあるけど笑
たおやかに輪をえがいて:窪美澄
ただのおばさんだった中年女性が強く美しく自分の人生を歩き出す物語
絵里子は近所のホームセンターでパートをし、家に帰れば夫:俊太郎と大学生の娘:萌のために家事を子なす日常を送っていた。家族はそんな絵里子を空気のようにあつかい、絵里子自身も家で一人で過ごす時間を寂しく感じていた。
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久しぶりの同窓会で旧友の詩織に再会した絵里子。詩織は離婚をし、今は若い女性のパートナーと暮らしながら自分のお店をもっていた。詩織のかわりように戸惑いながらも、絵里子はいままで自分が家族と過ごしてきた時間の中の幸せを思い出しながらも、現在の生活や自分がたたのおばさんなことに自信を無くしていた。
どこかもやもやした気持ちを抱えたまま過ごしていた絵里子は、偶然夫が落とした風俗店のポイントカードを見つけてしまう。店をネットで調べたり近くまで見に行ったりしたにもかかわらず、肝心の夫には問いただせないままだった。
そんな中、萌に「家族ごっこはうんざり」と言われ、絵里子の夫に対する怒りは爆発、風俗店通いを知っていたことを伝え、詩織の家へ家出してしまう。
離婚するか悩みながら、詩織の店で働き始めた絵里子は、いろいろな女性に出会い、自分のこれからの生き方について考えるようになる。
主婦から働く女性になり、身なりだけでなくふるまいも変わった絵里子は、ただのおばさんからいい女に変わっていった。
自分に自信が持てるようになった絵里子は、昔、夫と出会い付き合い始めたバーへ通うようになる。もし夫にもう一度会えたら、やり直そうと心に決めて。
子供が育ったあとの中年女性の葛藤と、夫婦の危機を描いた物語。
夫の浮気疑惑から、別居にいたって仕事を始めるまではよくある展開だなと思った。
冷めた夫婦だと思っていた絵里子と夫の付き合い始めのエピソードはあたたかく素敵だなと思っていたら、それがラストにいきてきた。
離婚して新しい人生ではなく、お互いを見つめなおし、またあたらしいスタートを切ろうとしている二人をそっと応援したくなるラスト数ページだった。