たおやかに輪をえがいて:窪美澄
ただのおばさんだった中年女性が強く美しく自分の人生を歩き出す物語
絵里子は近所のホームセンターでパートをし、家に帰れば夫:俊太郎と大学生の娘:萌のために家事を子なす日常を送っていた。家族はそんな絵里子を空気のようにあつかい、絵里子自身も家で一人で過ごす時間を寂しく感じていた。
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久しぶりの同窓会で旧友の詩織に再会した絵里子。詩織は離婚をし、今は若い女性のパートナーと暮らしながら自分のお店をもっていた。詩織のかわりように戸惑いながらも、絵里子はいままで自分が家族と過ごしてきた時間の中の幸せを思い出しながらも、現在の生活や自分がたたのおばさんなことに自信を無くしていた。
どこかもやもやした気持ちを抱えたまま過ごしていた絵里子は、偶然夫が落とした風俗店のポイントカードを見つけてしまう。店をネットで調べたり近くまで見に行ったりしたにもかかわらず、肝心の夫には問いただせないままだった。
そんな中、萌に「家族ごっこはうんざり」と言われ、絵里子の夫に対する怒りは爆発、風俗店通いを知っていたことを伝え、詩織の家へ家出してしまう。
離婚するか悩みながら、詩織の店で働き始めた絵里子は、いろいろな女性に出会い、自分のこれからの生き方について考えるようになる。
主婦から働く女性になり、身なりだけでなくふるまいも変わった絵里子は、ただのおばさんからいい女に変わっていった。
自分に自信が持てるようになった絵里子は、昔、夫と出会い付き合い始めたバーへ通うようになる。もし夫にもう一度会えたら、やり直そうと心に決めて。
子供が育ったあとの中年女性の葛藤と、夫婦の危機を描いた物語。
夫の浮気疑惑から、別居にいたって仕事を始めるまではよくある展開だなと思った。
冷めた夫婦だと思っていた絵里子と夫の付き合い始めのエピソードはあたたかく素敵だなと思っていたら、それがラストにいきてきた。
離婚して新しい人生ではなく、お互いを見つめなおし、またあたらしいスタートを切ろうとしている二人をそっと応援したくなるラスト数ページだった。